白と緑のスニーカー

シュフ2年目突入…

花火 / 又吉さお樹

カフェにまで鳴り響く爆音。

バイト先に、みなとみらいの神奈川新聞花火大会の音が聞こえてきた。

ガラス越しに、うちわを仰ぎながら歩く家族や、浴衣姿のカップルが通り過ぎるのを夕方から何度も見た。

 

最近のわたしはもっぱら、夕方から1人で営業する、孤独シフト。

バイトの分際で、こんなことがあって良いのかと不安である。

1人でいるときに、何かあったらどうしようと心配になることもある。

前日から、「花火大会に行く人で、夕方店が混んだらどうしよう」という不安に襲われていた。

しかし、その不安は思わぬ形で覆された。

一時、普通の日でもあまりないノーゲス(ノーゲスト:お客様がゼロ)になった!

逆にむなしい。

 

閉店時間が過ぎて、黙々とクローズ作業を進めていると、カフェの入っているビルの、いつも声をかけてくれる優しい警備員のおっちゃんが話しかけてきて、

「花火大会だからもう帰っていいよ!(笑)」と言われるも、今更遅いよ、と思う。

しかも、そんな権利はわたしにもあなたにもない。

「なんでこんな日に遅番なの?」

わたしが1番そう思ってる。

「わたしはデートがあるからって言って、男の子に任せればよかったのに!」

おっちゃんが言うところの「男の子」はきっと彼女と花火大会に行っているに違いない!(知らんけど。)

わたしにだって誘ってくれた友達がいたのに!

 

花火の終了予定時間15分前に退勤。

ちょっと歩けば、見えるところまで行けるけど、花火大会に行った人達でごった返す電車に乗るのは嫌だ。

花火が終わる前に電車に乗らなければ。

花火を見たあと満員電車に乗るのはいいが、単なるバイトの後に満員電車に乗るのは嫌だよ。

それでも車内はそこそこに混んでいた。

 

という文章を打っていたら、次は降車駅だ。

最後まで座ることはできなかった。

電車が停車し、ドアがひらく。

降りようとドアの方へ行くと、近くの座席の1番端に座っていたサラリーマンらしき男性も立ち、降りるようだった。

わたしはその男性が座っていた席の横の手すりにかかっているビニール傘に気付き、「あの、傘お忘れじゃありませんか?」ととっさに声をかけた。

「あ、これ、ちがうんです」

その男性が座る前からその席にあったのだろう。

「あ、そうなんですね」と返した。

違ったのか…。

「でも、どうもありがとうございます!」

男性がお礼を言ってくれた!

結果、1日の終わりに、なんとなく癒されたわたしであった。

 

 

おわり。

 

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